@HayatedaWakichi@live-theater.net
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2026-07-16 05:46 UTC
「数字の9って歩の前髪に似てるよな」
「ホントに何言ってんの?」
役割を終えて妖精の国に帰っていく宮殿を見ながら、プロデューサーがそんなたわごとを宣った。
突然顔に数字の9を付けてるなんて言われた歩が、心の底から理解できないといった表情を作ったことに気づく様子はない。宮殿を建てるなんて無茶を通すために2週間戦い続けたプロデューサーの頭はその役割を放棄しつつあった。
「ほら、数字の9の垂れてる部分が歩の……」
「説明しなくていいから! 宮殿を帰すのは大臣さん達に任せて帰ろう!」
「でもこの後の終礼に参加しないと」
「なら激情でいいから少し寝よう、ね?」
歩はプロデューサーの腕を引いて仮眠室に向かった。抵抗らしい抵抗は無く、不自然な程の軽さに歩は顔を青く染めた。
口だけは往生際が悪いプロデューサーをベッドに寝かせると、歩もベッド際に椅子を持ってきて腰掛ける。やっとのことで落ち着くと、さっきよりも少し小さくなった宮殿を帰す音が聞こえてくる。プロデューサーは何か言いたげに歩を見つめてきたが、結局何も言わずに口を閉じた。
「まつりさ、みんなの前だといつも通り振る舞おうとしてたけど、それでもすごい喜んでたよ」
歩は静かに語りだした。今回の記念講演でセンターを務めた、同い年のはずなのにずっとしっかりものな友達が見せた隙のことを。
「プロデューサーが宮殿建てるって言い出した時はびっくりしたし、記念講演とはいえ1回の企画で使う予算じゃないってすごい怖くなったけど……。レッスン中とかずっと嬉しそうなんだもん」
話していくうちに、プロデューサーの相槌は小さくなっていった。まつりの様子を思い出しながら、身ぶり手ぶりで表現している歩はそれに気づかない。
「だから、まあなんと言うか……宮殿公演やってよかったなって」
歩が視線を下ろした時には、プロデューサーの目は閉じられていた。静かに上下する布団を見て初めて、宮殿を帰す音に混じっていたゆっくりとした呼吸音が聞こえた。
「寝ちゃった……。まぁ、アタシの前髪が9とか言い出すくらいには疲れてたみたいだし」
まつりのロールを6って言ったら酷い目にあっていただろうことを思うと、自分でよかったと安心するような不服なような。そんな気持ちを胸に抱えながら、歩も少し休もうとベッドに横になった。
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